
工場での生産活動や排水処理の過程において、泥状の物質が発生することがあります。これは、一般的にスラッジと呼ばれるものです。スラッジは放置すると、悪臭や配管詰まりなどの故障を引き起こします。さらに処理コストがかさむため、企業の利益を圧迫する要因にもなりかねません。
本記事では、スラッジの基本的な意味や発生する原因について詳しく解説します。さらに、コストを抑える適切な処理方法や注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
スラッジとは
スラッジとは、工場排水の処理過程や、金属加工、化学製品の製造工程などで生じる、水分を多く含んだ泥状の固形物のことです。日本語では「汚泥(おでい)」とも呼ばれており、産業廃棄物の一種として、法律に則った適切な処理が義務付けられています。
有機性スラッジと無機性スラッジの違い
スラッジは、その成分によって大きく有機性スラッジと無機性スラッジの2種類に分類されます。
有機性スラッジは、主に生物学的な排水処理の過程で発生します。食品工場、下水処理場、化学・薬品工場などから排出されることが多く、微生物や食品の残りかすが主成分です。水分を抱え込みやすいため脱水しにくく、放置すると腐敗して悪臭を放ちます。
無機性スラッジは、金属加工や化学工業などの産業活動から生じます。金属の酸化物や砂、鉱物などが含まれており、無機物質が主体となっています。比較的脱水はしやすいものの、重金属などの有害物質が含まれる場合があり、厳格な管理が必要です。
それぞれの性質がまったく異なるため、処理のアプローチも変える必要があります。
放置するリスクと悪影響
有機性スラッジの場合は、腐敗が進むことで強烈な悪臭を放つようになります。無機性スラッジが配管やタンク内に蓄積すると、設備の詰まりや深刻な故障の原因に直結します。
また、有害物質を含む無機性スラッジが万が一外部に流出した場合、重大な環境汚染につながる恐れもあります。これは企業の社会的信用を失墜させるだけでなく、廃棄物処理法違反による厳しい罰則の対象となります。そのため、定期的な清掃と迅速な処理が欠かせません。
スラッジが発生する主な原因
スラッジが発生する背景には、事業活動におけるいくつかの要因が存在します。ここでは、主に製造業の現場で考えられる発生原因について解説します。
水処理や加工工程での発生
最も代表的な発生原因は、工場内の排水処理設備です。排水をきれいな水にするためには、微生物を使った生物処理や、凝集剤を用いた化学的処理を行う必要があり、この過程で、水中の汚れが凝集・沈殿し、大量のスラッジとして分離されます。
また、繊維の染色工程、化学薬品の製造、食品の加工工程など、生産プロセスそのものからも発生します。これらは日々の工場稼働において、避けては通れない副産物です。
クーラントの劣化や配管・タンクへの蓄積
金属加工の現場では、切削や研削時に使うクーラント(切削液)のタンク内にスラッジが溜まりやすい傾向にあります。このスラッジの正体は、加工時に出る微細な金属粉や砥石の破片だけではありません。機械から漏れ出た潤滑油などが液に混ざり、そこに細菌が繁殖することで、ドロドロとしたヘドロ状の物質に変化するのです。これが循環パイプやタンクの底に蓄積すると、液の劣化をさらに早め、機械のトラブルを引き起こす原因になります。
適切な処理方法
スラッジは「産業廃棄物」に該当するため、法令を遵守した適切な処理が求められます。主な処理プロセスは以下の通りです。
産業廃棄物として処理を委託する
自社で最終処分を行えない場合は、許可を得た専門業者へ委託するのが一般的です。委託する際は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行し、最終処分まで適正に処理されたかを確認・管理する義務があります。
しかし、スラッジは排水処理直後の液状(スラリー)では98%以上、脱水機にかけた後の「脱水ケーキ」と呼ばれる状態でも水分含有率が70%〜85%程度と非常に高めです。処分費用は重量や体積に応じて計算されるため、水分を含んで重くなったスラッジをそのまま委託すると、莫大なコストがかかります。
乾燥機による水分調整と減容化
処分コストを抑える方法として注目されているのが、乾燥機を用いた減容化(ボリューム削減)です。スラッジの大部分は水分で構成されているため、乾燥させて水分を飛ばすことで体積と重量は大幅に減少します。外部へ委託する産業廃棄物の量を減らせるため、この工程を取り入れることで、処理コストを大きく削減できます。
また、乾燥によって扱いやすくなれば、一部の有機性スラッジを堆肥化や燃料化(サーマルリサイクル)へと再資源化することも可能です。産廃コストの削減だけでなく環境負荷の低減にもつながるため、多くの現場で導入が進められています。
処理する際の注意点
スラッジの処理を進めるにあたっては、いくつか気をつけるべきポイントがあります。
後々のトラブルを防ぐためにも、以下の点を確認しておきましょう。
事前分析で有害物質の特性を調べる
スラッジの中にどのような成分が含まれているか、処理の前に分析することが重要です。
特に無機性スラッジには、鉛、カドミウム、クロム、水銀、砒素などの重金属類や、有害な化学物質が含まれている可能性があります。これらが基準値を超えて含まれている場合、通常の産業廃棄物ではなく「特別管理産業廃棄物」として、より厳格な基準での処理が義務付けられます。
そのため、委託前には廃棄物の性状・成分・有害性など、適正処理に必要な情報を処理業者へ正確に提供しましょう。情報共有には、環境省のWDS(廃棄物データシート)を活用すると有効です。特別管理産業廃棄物に該当する場合は、委託契約前に必要な廃棄物情報を文書で通知する義務があります。
許可業者に依頼する
委託の際は、品目や区分に応じた「産業廃棄物処理業許可」を自治体から得ている業者か必ず確認してください。無許可の業者に委託した場合、自社も委託基準違反として、5年以下の懲役や1,000万円以下の罰金などの対象となる可能性があります。 さらに法人に対しては最高3億円の罰金が科せられるほか、企業名が公表されるリスクもあるため、十分な注意が必要です。
また、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行し、処理の完了を最後まで確認する義務が生じます。適正なルートで処理が行われているかを、常に管理しましょう。
まとめ
スラッジは、製造業を営む上で避けては通れない廃棄物です。放置すると設備の故障や悪臭を招くため、ルールに従って速やかに処理を行わなければなりません。高騰する処理費用を削減するためには、乾燥機を活用してスラッジの水分を飛ばし、減容化することが効果的です。
処理する際は、成分の事前分析や許可業者への委託など、法律に基づいた適正な管理を心がけましょう。自社の現場に合った処理方法を見直し、コスト削減と環境保全の両立を目指してください。
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